2Mほどの路地にのみ接道した60㎡に満たない敷地における家族4人のための住居。古い商店跡地が残る市街地の典型的な路地状狭小地で、準防火地域指定も受けいる。 建築的な法解釈は然る事乍ら、本課題はこの場所で建築主家族が狭さや不便を感じず永く豊かに住み続け、子供の成長といった変化を受容できる計画ができるかであった。 「小さいけど豊かな生活」を得るためには効率が良く無駄のない計画が必要と捉え、天空率による計画可能な箱に無駄なく生活の機能を詰め込む事から考えた。だが単純な階の積層だと建坪の小ささが狭さに直結すると感じ、一つの階(1床)の面積を小さくしてでも体験として移動を多くしたかった。仮に機能を設定した1室(=1床)を階段のみの動線で繋ぎ、計画可能な箱の限界までスキップで収める構成を採用する事で床数、移動を多くでき、延面積の効率も高くなった。 設計中の建築主家族との議論で様々な案が出る中、水廻り以外は住みながらに場所を決め、新たに場所を発見していけるという可能性が設計を終わらせるに至った。 施工面でも隣地を跨いでの資材搬入計画等難易度が高った事もあり、小さく限られた場所でも多くの出来事や可能性を体験できた思い出深いプロジェクトとなった。
構造設計:株式会社ジョインウッド 設計担当:植野真臣/CARVE建築設計 PHOTO:合同会社CARVE